少しずつ色づく雑木林で、いち早く鮮やかな紅葉で目を引いたのはカキの木であった。カキといっても、野生のカキで正確な樹種名はわからない。そんな色づいたカキの木を見上げると、シルエットでセミの脱け殻が目に入った。紅葉とセミの脱け殻では季節が交差してミスマッチな組合わせだが、気持ちとしては、「よくぞこの時期までしがみついていた」という尊敬の念が沸いてくるのである。冬に、常緑樹の葉裏でセミの脱け殻を見つけたことはあるが、鮮やかな紅葉との組み合わせは初めての発見であった。過ぎ去った夏の、にぎやかな夏の雑木林を回想させる出会いであった。