夜の樹液を観察していると、普段はあまり興味を引かないヤマトゴキブリが、今日はずいぶんと配偶行動に忙しくその行動に見入ってしまった。
オスはメスが近くにいることを触角で感じ取ると、お尻を向けて翅を上げ、翅の付け根にある誘惑線に導くのであった。そのポーズは、まるでスズムシのごとくであったが、当然鳴くわけではない。
ゴキブリの配偶行動は、誘惑線から出るフェロモンをなめさせることが交尾の決め手となるようで、3億年も前からおそらく変わっていないセレモニーなのであろう。目レベルで近縁のバッタ目のスズムシやマツムシ、カンタンなどにもそれが受け継がれているわけで、鳴く虫たちが音を主とした信号とする前のなごりといえる。
見ている限りオスの積極的な行動に対してメスは慎重で、交尾をするどころか誘惑線をなめることすら稀であった。結局、交尾に至る様子は確認できず、ゴキブリといえども相性があるのだろうと思った。