夕方近くになって、新緑の雑木林をぶらりと歩いた。芽吹いたばかりと思っていた若葉の、あまりに早い展開と、突然加速する虫の季節に、うれしさと同時に焦りすら感じられる。小道の低木では早速ヒメクロオトシブミが葉巻を拵えていた。そんな小枝で見つけたのがカギシロスジエダシャクの終齢幼虫であった。冬芽そっくりの姿で冬越しし、新芽の展開に合わせて自らも姿を同調させるという変身型カムフラージュの第一人者的イモムシといえる。体全体は新緑のグリーンだが、微妙な濃淡がモザイクとなり、背中に鋸歯を思わせる突起をあしらえている。そして、末端には芽鱗の赤茶色を残すというこだわりようである。