7月3日の軽井沢での採集で、蛾の師匠がハルニレの葉裏に付いた卵を発見した。もしかしたら本命のシロスジシャチホコの卵かもしれないということで大事に持ち帰った。孵化した微小な幼虫をルーペで見つつ、あのゴツゴツとした幼虫の姿を期待して育てていた。2齢になってもいっこうにそのような体型に近づかず、他の種類を疑い始めた。ハルニレといえば・・・・もう一種いた。ギンモンシャチホコだった。昆虫の森ではウスイロギンモンシャチホコばかりだが、過去に一度ライトに来て、幼虫の姿を見てみたいと思っていた種類であった。本命ではなかったが、これはこれで想定外の大ヒットだった。赤みがかった褐色にピンクと黄色を添えた側線は、かなり洗練されたデザインである。その体型とカラーリングの意味はまったく理解ができないところが不思議でおもしろい。もうひとつ付け加えると、葉を食べ進む過程で尾脚は固定したまま体を伸ばしていき、腹脚をはずして体がまっすぐにつっぱっていくのがおもしろい、このとき背中の突起は腹脚と同じような出っ張りになるが、何を模しているかはまったく想像もできない。イモムシが長い歴史の中で確立させた外観が、決して人に理解できるものでなくても、存在しているという事実が、生き残る上で理にかなっているという証明と考えるしかない。